2021-08

SS

酔言

こいつがこんな潰れるまで飲む奴なんて思わなかった。肩を貸して歩かせていた意識の曖昧な相棒を自分のベッドに落として俺はそばに座り込んだ。  ランガが成人して、初めての飲酒は母親と二人で。二回目は暦の家でがいいとありがたくご指名を受けて。うちの親が引っ張り出してきた、ごちそうの時にしか開けない特別な酒瓶を開けて、ちょっとだけ俺もご同伴に与って。確かに強い酒だったし、外国の血が入ってると強い酒弱い酒も俺たちとは違うのかも知...
SK∞

箱から星屑

夏の晴れた空が好きだ。どこまでも抜けていくような遥かな青、その中を風を感じながら滑るのが好きだ。高いところから風の塊の中を跳ぶ感覚、空や海と同じくらいきらきらした青、そんな好きなものが増えてからはもっと好きになった。  だけど沖縄の夏は雨の日も多い。クレイジーロックも開かないし、屋根のあるパークは閉まる時間も早い。今日だって空は厚い雲に覆われて、今にも泣きだしそうだ。晴れてる日ならもっと遅くまで滑ってる時間に、俺は自...
SS

金メダル

要は風車の形からの応用だ。そこから四隅を鶴の時みたいに細長いひし形にして、その間を外側に開いてひし形を折りこむ。そこに差し込むのが、二百枚に一枚しかないこいつだ。 「……っと。んで、リボンつけて……よし、七日、千日、そこ並べ」  テーブルの縁からずっと俺の手元を覗き込んでいた双子は弾かれたみたいにどたどたと俺の前に並んだ。緑のリボンをつけた黄緑のと、黄色のリボンをつけたオレンジの。両手に持って、同時に二人にかけてやる...