2021-10

SS

エピローグ

「……っていう夢をここ何日か連続で見たんだよな」  十月三十一日深夜の廃鉱山。俺の隣、岩肌に背中を預けたエイリアン――のきぐるみを着た暦が言った。
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悪魔×聖職者

若い悪魔祓いのくせに生気が薄いヤツがいるって聞いたからわざわざ寿命を貰いに来てやったんだ。なのに。 「暦」  山奥の集落、ヤツの管轄の小さな教会。俺はその聖職者に拘束されている。……正確に言うなら、腕の中に抱き込まれている。なんでこんなことに。
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狼男×人間

「今夜満月だから部屋に入ってくんなよ」  高校を卒業して一緒に暮らし始めた春、恋人は鶴の恩返しみたいな事を言った。
SK∞

人間×吸血鬼

「暦、おなかすいた」  高く抜ける秋空の下の屋上、菓子パンみっつと一リットル紙パックの牛乳と俺の弁当の卵焼きを胃に収めた相棒が言うそれは、もちろん空腹のことではなくて。俺はため息をつくふりをしながら学ランの袖をまくる。  これで何度目になるだろう、この綺麗な顔した吸血種に血を与えてやるのは。
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『愛情表現』

通学路の丁字路でさ。声掛けると俺の事じっと見て来たり、頭とか喉撫でても大人しく擦り寄ってきてさ。……朝から何してんのって、変な事言ってるか?  でさ、これ、懐かれてるよな?ミヤ、猫の愛情表現とか詳しいだろ?  ……なんで叩くんだよ!?惚気と勘違いさせる方が悪いって、お前何の話してんの!?
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『おかしくなりそう』

まだ慣れない南の島の炎天下、夢中で滑っていた俺は倒れた。日陰に寝かされ、額に濡れタオルを置かれ、扇いだ風を受ける。  迷惑かけてごめん。くらくらする中で言うと、俺にならいくらでも、と甘やかす。  もう離れられないなと零す。離れる気あんの?本気の声が返ってくる。  何だよそれ。暑さよりお前に、
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『君が微笑む』

クラスのグループのアルバムには教室で撮った写真が納まっていて、俺も何枚も写っている。  時系列で見て気付くのは親友の表情だ。仏頂面がだんだん柔らかくなり、花咲くみたいな笑顔になる。――俺を見る時だけ。  これクラスのヤツ全員見られるんだよな?照れより優越感が勝つから俺もどうしようもない。
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『ゆびきりげんまん』

前にさ、約束って俺が小指出したとき、大人はこうするんだよってDAPしたよね。  でも指切りって「嘘ついたら針千本飲ーます」って続くだろ。破ったときの罰がないと代わりにならないなって思って。  だから何か決めないか?約束破ったら一生かかっても償うって意味の何か。  ……いるだろ?一生、一緒に。
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『力のない抵抗』

据え膳って言葉を聞いた。そうなろうと思った。  押し倒して上に乗って、額を付けて見つめる。触れた胸に感じる鼓動は速い。なのに固まったまま何もしてくれない。  俺の好きにするけど、いいの。身体を捩って諫める言葉を吐いてくるけど、本気なら跳ねのけられるって知ってる。  なぁ、もう諦めて襲ってよ。
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『精一杯の笑顔』

あの日船の上で見た視線によく似ていて、でも全然違うってすぐにわかった。ぼんやりした「いいな」じゃなくて、もっとまっすぐな「すき」。  わからないはずない、俺が暦を見る視線と同じだったから。  叶わないって知ってた、だから平気なんだ。でももう少しだけ待って。ちゃんといつもみたいに笑うから。
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『とっくに知ってるよ』

出逢った頃から好きだった。宅飲みで潰れた親友が口走る。言った当人は夢の中。  多分言う気はなくて、墓まで持ってくつもりだったんだろう。俺と同じで。  ずっと前から知ってた。伝える気なんてなかった。相棒の距離がいいって思ってたのに。  色付いた白い肌に喉が鳴る。聞いたらもう、欲が出て仕方ない。
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『残像』

一人で入ったシフトのあと、石畳の表通りから曲がって細い路地を通って行くことがある。チェリー、もとい桜屋敷先生の書庵の裏。  目印も何もない通りの途中で立ち止まって、しゃがみ込む。目を閉じる。風とウィールの音を思う。  まぶたの裏に浮かべるのは、俺の上を跳ぶ姿。時々、思い出したくなるんだ。
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『手を出したい』

先のことはわからないって言うけど、これだけはわかるよ。未来の俺もずっと暦が好き。この気持ちは絶対に変わらないって確信がある。  今の俺は今の暦が好きだ。この先ずっと、無限に一緒にいるとしても、今の俺たちにしかできないことをいっぱいしたい。  今すぐ触れたい。触れられたい。全部。なぁ、暦。
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『遠くへ行きたい』

例えば一緒に住むとして、個室は要るから2DKにはしときたいし、食費もかかるしスケートなんてもっとだろ。そのためにもさ、稼ぐってなったら都会、大阪とか東京とか、もっと遠くに行きてえなって思うことはあるよ。  お前がすごいから。俺自身が、自信を持ってお前の隣にいられるようになりたいから。
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『煽らないでくれよ』

スタートにはランガにミヤ、何故かチェリー、何か知らない奴ら。画面は「レキ争奪戦」、賞品は俺を好きにする権利らしい。ラブホに縛られ自由を奪われた俺は虚しく出走者を眺める。  沿道から高い声。スノー頑張って。レキといちゃいちゃして。本人はやる気に満ちて大きく頷く。頼むからこれ以上そいつを