『唇をなぞる指先』

140SS

 完全に無意識だった。口元を拭った指が触れた唇は、幼い妹じゃなく年上の相棒のそれで。
 悪い、声を掛けて離そうとした指を離せなかったのは、強く手首を掴まれたから。拭って汚れた指先はそのまま赤い口の中に飲み込まれて――
 じゅっ、吸われた音に指を引き抜いた俺の顔は、どんな色をしてただろう。