SK∞

Becaue I love you

Because I love you -あとがき-

Becaue I love you

Because I love you(+)-cobalt-

「お前、進路ってなんか考えてんの?」  暦にそう問われたのは、高校三年の夏、暦の部屋での事だった。
Becaue I love you

Because I love you(+)-lime light-

大好きな人と、暦と一緒に過ごす朝が好きだ。俺の方が目が覚めるのが遅かった時は、優しい瞳に見つめられて一日の始まりを迎える事ができる。頬を撫でられて、髪を梳かれる。寝起き特有のいつもより掠れた声でおはよ、と囁かれて名前を呼ばれる。頬を撫でてくれる手にすり寄って甘えて、まだとろんとしてるだろう自覚のある目で見つめれば、仕方ないなって風に息を吐いて、甘い琥珀色が近付いてきて、やわらかいキスを顔中に、焦らした最後に唇にくれる...
Becaue I love you

Because I love you(+)-As it is-

アスリートとしては当然普段から食事には気を遣って糖質脂質が多いものは取らないようにしてるけど、大きな試合のない時には時々ハメを外す事もあるし、メディアの取材やスポンサーとの食事では僕の方からおすすめのレストランなんかを指定する事もある。地元出身の国会議員や書道家の先生もご贔屓という触れ込みで紹介したイタリア料理店は、僕自身もプライベートで十年近く前からよく訪れている。もっとも、その頃は接待に使うんじゃなくて、夕方のデ...
ロリポップ・ハニー

ティラミスにはまだ早い

「いい恋人の条件って何だと思う?」  通い慣れたイタリアンレストラン、テーブルの私の向かいに座ったランガが言った。頬杖をついて、少し眉を寄せている。何か不満があったんだろうか。ランガの口から出る「恋人」に当てはまりそうなんて、思い浮かぶのは一人しかいない。
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不思議なお店系レラ

140SS

『はいはい、降参降参』

ずっと夢中でいて欲しくて。俺が「色仕掛け」すると、暦は大きく息を吐いて仕方ないっていう風に「降参」してくる。我儘を宥められてるみたいで悔しい。  本当に煽られてくれてるの。零した途端、世界が回る。床に押さえつけられて、燃える茜色しか見えなくなる。背筋が震える。  なぁ、もっと欲しがって。
ロリポップ・ハニー

あったかくて、あまい。

笑い声が聞こえた気がして顔を上げる。薄く開いた台所の窓から見える外は真っ暗だ。泡のついた手をそのままに窓に近付けば、家の前の通りを歩く人が見えた。  壁時計を見上げれば十時過ぎ。もうそんな時間になるか。丼を水切りに積み上げて、泡を落とした手を雑に拭って居間の引き戸を開ける。
140SS

『冬空と雪』

見上げた窓の外、灰色の空の下には細かい白が舞い踊っていた。  どうりで冷えるわけだ。故郷から本土に出て数年、この冬の風物詩を見るのは初めてじゃないけど、ここまで激しいのはなかったと思う。多分、今まで見た中で一番雪らしい雪なんだろう。  だけど、俺の中で一番きれいな雪は、きっと、ずっと。
SK∞

特別

そういえば、二人だけの決勝戦をやった時は、空がうっすら明るくなってきてたっけ。  ウィールの音だけが響く中、ふと考えた。毎日過ごしてる街だけど、今は目を凝らさないとどこだかわからないくらいに真っ暗だ。日が長い季節とはいえ、夜明けまで多分まだあと数時間。一日で一番暗い時間は今くらいなのかもしれない。 「暦?」  並んで滑るランガが俺を呼ぶ。ちょっとぼーっとしすぎてたらしい。暗いって考えてたとこなんだし、気を付けねぇと。...
140SS

『追憶』

目を閉じた先、まどろみの中、春の日の俺がいた。何も瞳に映ってない、雪山から動けないままでいる俺。――スケートをまだ知らない俺。あんな顔をしてた頃が、俺にあったんだ。  声を掛けようとして思い留まる。あの俺はこれから知るんだ。無限の夢を。  教えてくれるのはお前じゃないと意味がないから。
140SS

『「もう何も言うな」』

軋むベッドの音より大きく、俺の耳に届くもの。  れき、すき、もっと。離さなと言うように頭を抱かれて、溶けそうな呼吸と一緒に注がれるいつもより高い掠れた声は、俺の熱をどんどん上げて、薄く残った理性を剥がしていく。  それ以上言われると、優しくしてやれねぇから。吐息ごと飲み込んで口を塞ぐ。
140SS

『ささやかな願い』

「ずっと一緒に」。  笑って話したその願いは、ささやかに聞こえても儚くなんてないことくらい知ってる。明日隣にいられるかさえ、神様にしかわからない。  だけど、今この瞬間、一秒先の未来、そばにいて、手を繋いでいたい。一瞬の願いを積み重ねて願った永遠なら、ずっと続くって、そう思いたいんだ。
140SS

『嘘だと言ってよ』

その唇が動いたのは、俺を拒絶する言葉。俺が暦から一番聞きたくない言葉。  ――飛び起きた俺は全身に嫌な汗をかいていて、夢見がどれだけ最悪だったかを知らしめてくる。目が合わなくなってから、こんな夢ばかり見てる。  ねぇ、お願いだから。今すぐ俺のそばにきて。嫌いだなんて、嘘だって言ってよ。
140SS

『意地悪』

お前の表情なら全部俺のもんにしたいから。思うのも当然だったんだ、どんな反応するんだろうって。  一度に触れてた手を前からも後ろからも離す。天を仰いで泣くものも、やわらかく綻んだそこも、せつなくふるえている。  潤んだ瞳が俺を睨む。唾液に濡れた唇から落ちた言葉に、どうにかなりそうだった。