Becaue I love you
Because I love you(+)-cobalt-
「お前、進路ってなんか考えてんの?」 暦にそう問われたのは、高校三年の夏、暦の部屋での事だった。
Because I love you(+)-lime light-
大好きな人と、暦と一緒に過ごす朝が好きだ。俺の方が目が覚めるのが遅かった時は、優しい瞳に見つめられて一日の始まりを迎える事ができる。頬を撫でられて、髪を梳かれる。寝起き特有のいつもより掠れた声でおはよ、と囁かれて名前を呼ばれる。頬を撫でてくれる手にすり寄って甘えて、まだとろんとしてるだろう自覚のある目で見つめれば、仕方ないなって風に息を吐いて、甘い琥珀色が近付いてきて、やわらかいキスを顔中に、焦らした最後に唇にくれる...
Because I love you(+)-As it is-
アスリートとしては当然普段から食事には気を遣って糖質脂質が多いものは取らないようにしてるけど、大きな試合のない時には時々ハメを外す事もあるし、メディアの取材やスポンサーとの食事では僕の方からおすすめのレストランなんかを指定する事もある。地元出身の国会議員や書道家の先生もご贔屓という触れ込みで紹介したイタリア料理店は、僕自身もプライベートで十年近く前からよく訪れている。もっとも、その頃は接待に使うんじゃなくて、夕方のデ...
Because I love you(+) -pure-
――月が、輝いている。 窓から顔を出して位置を確認しながらハンドルを回す。縁石にぶつかる感触に動きを止め、ギアをパーキングに入れてサイドブレーキをかける。キーを回してエンジンを切ったところで、俺はハンドルに突っ伏した。
Because I love you(5) -…years later-
スケートをやりたい、って本当に思うきっかけってなんだろう。 一番初めは、ちょっとの興味だと思う。テレビで見た選手がかっこよかった。好きな芸能人が趣味だって言ってた。友達に誘われたから。そんなきっかけから、本当にパークに来たり、ボードを買ったりする人間はほんの一握りだ。
Because I love you(4) -Sunday,20th,march 12:34 NewYork-
ぴこん。片耳だけ付けたワイヤレスイヤホンがスマホへの通知を告げる。一旦スケートを止めてポケットを探る。画面の表示を見れば、ランガからのメッセージ。 『もうすぐ』 通知だけでそれを見て、アプリを開かないまま画面を暗くする。スマホを仕舞い直して、再びスケートを漕ぎ出す。両足をデッキに乗せて、ちらりと横を眺めた。
Because I love you(3) -Monday,7th,February-
日本にいるスケーターは、競技人口で四千人くらい、愛好家で数えると百万人近くになるらしい。人口の約八パーセント、クラスに二、三人の計算とすると、想像より多い。高校では俺とランガ以外のスケーターは知らなかったけど、ボードを持ってるだけくらいのヤツはいたのかもしれない。
Because I love you(2) -Wednesday,22nd,December-
沖縄にいた時は、朝帰りなんて当たり前だった。なにせSのビーフは午前零時にスタートする。あの熱狂を楽しんで、クレイジーロックを下ってこっそりベッドに戻る頃には、空が白み始めてる事も珍しくなかった。その分授業中にはよく寝てたけど、仕事してるともなればそうはいかない。
Because I love you(1) -Sunday,7th,November-
好きな事を仕事にすると嫌いになるって話があるらしい。けど、俺は多分そんな事はない。一日中だって滑ってられるし、デッキの組み方考えて夜を明かせるし、カッケー動画見てるだけでもあっという間に時間が過ぎる。誰かと一緒ならなおさらだ。日に日にもっと好きになっていってる気さえする。