SK∞

You make me Rainbow

You take me to Inferno.

*** この街には人魚の伝説がある。人間の男に恋した娘が、人の脚を得る事を魔女に願った。魔女の薬により願いを叶えた娘は男に近付き、二人は仲を深めた。正体が人魚だと知れても二人の絆は強く、想いを通わせた娘と男は婚姻を遂げたという。 男が領主家の跡継ぎだった事もあり、人魚を娶った話は街、島中に生き渡った。ハッピーエンドの異類婚姻譚は数々の芸術のモチーフとなった。元から海の恵みへの感謝の意味があった祭も、舞の演目に人魚との...
140SS

『僕を呼ぶ声』

朝、いつもの待ち合わせ場所に来た時。  授業中、微睡んでたのに声を掛けた時。  昼休み、動画を覗き込んだ時。  放課後、サイコーなトリックをキメられた時。  夜、熱を分け合って見つめ合う時。  どんな時でも、その唇から紡がれるたびに、自分の名前がもっと好きになっていくんだ。  それから、おまえのことも。
140SS

『あたためてください』

「チンして食えよ」  帰りが零時を超えるとわかってた俺に恋人が作り置いてくれた夜食。ポテトにソースとチーズ、自分は食べないのに俺の好きな物を作ってくれててきゅんとする。  その分少し心が冷える。ここに彼がいないから。  好物よりも、身体と心ををお前とあっためたい。夜食をしまって寝室に向かう。
ロリポップ・ハニー

マシュマロ・ホイップ・アイス・シュガー

レ×ラ♀ ボードを持たずにショッピングモールにお出掛けした日の話。
SK∞

エピローグ

「……っていう夢をここ何日か連続で見たんだよな」  十月三十一日深夜の廃鉱山。俺の隣、岩肌に背中を預けたエイリアン――のきぐるみを着た暦が言った。
SS

悪魔×聖職者

若い悪魔祓いのくせに生気が薄いヤツがいるって聞いたからわざわざ寿命を貰いに来てやったんだ。なのに。 「暦」  山奥の集落、ヤツの管轄の小さな教会。俺はその聖職者に拘束されている。……正確に言うなら、腕の中に抱き込まれている。なんでこんなことに。
SS

狼男×人間

「今夜満月だから部屋に入ってくんなよ」  高校を卒業して一緒に暮らし始めた春、恋人は鶴の恩返しみたいな事を言った。
SK∞

人間×吸血鬼

「暦、おなかすいた」  高く抜ける秋空の下の屋上、菓子パンみっつと一リットル紙パックの牛乳と俺の弁当の卵焼きを胃に収めた相棒が言うそれは、もちろん空腹のことではなくて。俺はため息をつくふりをしながら学ランの袖をまくる。  これで何度目になるだろう、この綺麗な顔した吸血種に血を与えてやるのは。
140SS

『愛情表現』

通学路の丁字路でさ。声掛けると俺の事じっと見て来たり、頭とか喉撫でても大人しく擦り寄ってきてさ。……朝から何してんのって、変な事言ってるか?  でさ、これ、懐かれてるよな?ミヤ、猫の愛情表現とか詳しいだろ?  ……なんで叩くんだよ!?惚気と勘違いさせる方が悪いって、お前何の話してんの!?
140SS

『おかしくなりそう』

まだ慣れない南の島の炎天下、夢中で滑っていた俺は倒れた。日陰に寝かされ、額に濡れタオルを置かれ、扇いだ風を受ける。  迷惑かけてごめん。くらくらする中で言うと、俺にならいくらでも、と甘やかす。  もう離れられないなと零す。離れる気あんの?本気の声が返ってくる。  何だよそれ。暑さよりお前に、
140SS

『君が微笑む』

クラスのグループのアルバムには教室で撮った写真が納まっていて、俺も何枚も写っている。  時系列で見て気付くのは親友の表情だ。仏頂面がだんだん柔らかくなり、花咲くみたいな笑顔になる。――俺を見る時だけ。  これクラスのヤツ全員見られるんだよな?照れより優越感が勝つから俺もどうしようもない。
140SS

『ゆびきりげんまん』

前にさ、約束って俺が小指出したとき、大人はこうするんだよってDAPしたよね。  でも指切りって「嘘ついたら針千本飲ーます」って続くだろ。破ったときの罰がないと代わりにならないなって思って。  だから何か決めないか?約束破ったら一生かかっても償うって意味の何か。  ……いるだろ?一生、一緒に。
140SS

『力のない抵抗』

据え膳って言葉を聞いた。そうなろうと思った。  押し倒して上に乗って、額を付けて見つめる。触れた胸に感じる鼓動は速い。なのに固まったまま何もしてくれない。  俺の好きにするけど、いいの。身体を捩って諫める言葉を吐いてくるけど、本気なら跳ねのけられるって知ってる。  なぁ、もう諦めて襲ってよ。
140SS

『精一杯の笑顔』

あの日船の上で見た視線によく似ていて、でも全然違うってすぐにわかった。ぼんやりした「いいな」じゃなくて、もっとまっすぐな「すき」。  わからないはずない、俺が暦を見る視線と同じだったから。  叶わないって知ってた、だから平気なんだ。でももう少しだけ待って。ちゃんといつもみたいに笑うから。
140SS

『とっくに知ってるよ』

出逢った頃から好きだった。宅飲みで潰れた親友が口走る。言った当人は夢の中。  多分言う気はなくて、墓まで持ってくつもりだったんだろう。俺と同じで。  ずっと前から知ってた。伝える気なんてなかった。相棒の距離がいいって思ってたのに。  色付いた白い肌に喉が鳴る。聞いたらもう、欲が出て仕方ない。