花ヶ丘ゆうえんちでの公演の帰り。運転席に座った自称春組のおじいちゃんから買い込んだ土産を渡され、後部座席に乗り込んだ。隣に座った九門が紙袋を覗き込んで、赤い筒に手を伸ばす。
「これ、万華鏡?」
ああ、と車を出し始めた千景さんが反応
「普通の万華鏡よりキラキラに見えるらしいよ。覗いてみたら?」
言われるが早いか、九門は筒に目を当てている。つーか。
「暗くちゃ見えねえだろ……」
運転席に漏れないようにしながらスマホの光をかざしてやると九門はおお!とでかい声を上げた。
「どう?」
「世界が輝いて見える」
そんなことを宣った九門はほんとだって!と俺の顔を見てくる。運転席の千景さんと助手席の監督が声を上げて笑う。
「でも舞台の上からの景色よりはキラキラしてないかも」
「それは、まぁ……」
目を伏せて、その景色を思い返す。あれは何物にも代えがたい。俺だって知っている。前の二人も同意見なんだろう、笑い声も聞こえなくなる。
「あとね、莇にメイクしてもらって目開けるときも、いつもキラキラして見えるんだよ」
いつもより落ち着いた声に目を開ける。暗い中に見えた金色は、やわらかい光を纏っていて。お前の目だって、それこそ、
「……ッ」
浮かんだことをそのまま言うのは何だか癪で、奪い取った赤い筒で広い額を叩いた。