昼休みの屋上はあったかくて、俺の分まで用意してくれていた暦のお弁当は美味しくて。……それから、昨夜は少し寝付けなかったから。気が付いたら、俺の頭は暦の肩に乗せられていた。
たぶん、話しながら寝てしまったんだろう。弾むみたいな暦の声は心地良くて、ずっと聞いていたくて、安心するから。
暦はまだ、俺が目を覚ました事に気付いてない。まぶたは重いけれど、じきに昼休みも終わる。声をかけないと。そう思った時だった。
俺の頭を乗せた右肩が揺れる。左の指先にあたたかいものが触れる。ためらうように一度離されたそれは、今度はふわりと握られて――それから、きゅっと絡められた。
あわせられた手のひらは少しだけ湿っている。そわつく指に、時折すこしだけ、やさしく力が入れられる。……そのたびに、心臓が跳ねる。
ねぇ、暦。今どんな顔してるの。どうして俺にそういうことするの。頭の中は暦でいっぱいなのに、もっと暦のことしか考えられなくなる。勘違いしてしまいたくなる。
すっかり目は覚めていたけど、俺は寝たふりを続けることしかできなかった。
起きたらきっと、離されてしまうから。予鈴が鳴るまでは、このままでいたい。
きっと何度も、この感触を思い出す。何時間でも、暦のことを考える。
今日も寝不足になるな。ほんの少しの腹いせに、肩に乗った頭に重みをかけた。