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『妖しき月夜』

狼男っているだろ、なんて言うんだ。満月の晩だけ獣になるモンスター。月のせいだから忘れてくれって、そう言うんだ。  でも、月が明るいからお前の顔もよく見えたよ。俺を組み敷いた時の深さを増した琥珀色、舌が離れた時の怯えたような色。  なぁ、本当のお前を教えてよ。怖がらないで、俺が一緒だから。
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『がらがらと崩れる』

ブロックを組んだタワーから順番に抜いて重ねて倒したら負け。有名なゲームが押し入れの中から出てきたら当然勝負になって。  不意に重なった視線はやたら色っぽくて、勝ったら好きにしていいなんて言ってきて。  ひっかからねえよ。俺のその言葉が強がりだと証明するみたいに、傾いたタワーが音を立てた。
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『隠しきれない』

アンカットデッキ、整備オイル、袋麺、スキン、冷凍フライドポテト、チーズ、ルーブ、カラースプレー、他にもいっぱい、二人で一緒にやりたいことの準備。  久しぶりに連休が重なるのが楽しみで、たくさん買い込みすぎてしまった。  浮かれすぎで恥ずかしいけど、大荷物も俺の気持ちも全然隠せそうにない。
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『あと5秒』

目の前にはUniqueな寝顔。一度家に帰ってからお邪魔した彼の部屋、俺が来るまでの短い間に、彼は夢の世界へ旅立ってしまっていた。  呼んでおいて俺を置いていくんだから、少し仕返ししてもいいと思う。例えばあと30秒で起きなければキスしちゃうとか。  30、29、28、5、4、3、2、いち、
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『うつくしい古傷』

肩甲骨は翼の痕、とは何の言葉だっただろう。大切な人の背中を見て、あまりの愛しさに天使を思ったに違いない。その気持ちが少しわかる。  いまだ薄く残る背中のそれは、痛々しいけどきっと彼の誇りだから。存在そのものが愛おしい彼の大事な一部だから。  だから俺は祈りを込めて、その傷痕にキスをする。
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『頬に落ちる雫』

頬に落ちる雨に足を速めて、目的地に滑り込む。俺の気配が増えた相棒の部屋、濡れた服を脱ぐ間にベッドに倒される。 シーツが濡れると咎めれば、雨はあの日の俺の決闘を思い出して興奮するなんて熱く耳元に囁かれて。 今から汚すなら濡れるくらいいいか。開き直って、覆いかぶさる身体をひっくり返した。
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Because I love you(5) -…years later-

スケートをやりたい、って本当に思うきっかけってなんだろう。  一番初めは、ちょっとの興味だと思う。テレビで見た選手がかっこよかった。好きな芸能人が趣味だって言ってた。友達に誘われたから。そんなきっかけから、本当にパークに来たり、ボードを買ったりする人間はほんの一握りだ。
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Because I love you(4) -Sunday,20th,march 12:34 NewYork-

ぴこん。片耳だけ付けたワイヤレスイヤホンがスマホへの通知を告げる。一旦スケートを止めてポケットを探る。画面の表示を見れば、ランガからのメッセージ。 『もうすぐ』  通知だけでそれを見て、アプリを開かないまま画面を暗くする。スマホを仕舞い直して、再びスケートを漕ぎ出す。両足をデッキに乗せて、ちらりと横を眺めた。
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Because I love you(3) -Monday,7th,February-

日本にいるスケーターは、競技人口で四千人くらい、愛好家で数えると百万人近くになるらしい。人口の約八パーセント、クラスに二、三人の計算とすると、想像より多い。高校では俺とランガ以外のスケーターは知らなかったけど、ボードを持ってるだけくらいのヤツはいたのかもしれない。
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Because I love you(2) -Wednesday,22nd,December-

沖縄にいた時は、朝帰りなんて当たり前だった。なにせSのビーフは午前零時にスタートする。あの熱狂を楽しんで、クレイジーロックを下ってこっそりベッドに戻る頃には、空が白み始めてる事も珍しくなかった。その分授業中にはよく寝てたけど、仕事してるともなればそうはいかない。
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Because I love you(1) -Sunday,7th,November-

好きな事を仕事にすると嫌いになるって話があるらしい。けど、俺は多分そんな事はない。一日中だって滑ってられるし、デッキの組み方考えて夜を明かせるし、カッケー動画見てるだけでもあっという間に時間が過ぎる。誰かと一緒ならなおさらだ。日に日にもっと好きになっていってる気さえする。
ロリポップ・ハニー

後天性にょ

腕に触れたふわりとした感触がくすぐったくて、薄くまぶたを開いた。覚めきらない頭で視線を動かすと、俺のむき出し肩には雪の色をした綺麗な髪がうずめられている。