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『なぐさめる』

例えば、宮古島に行く船で自分に向けてと勘違いして女の子に声を掛けたこと。似たような失敗を、暦は何度もしている。  そのたびに落ち込んでないって強がる暦に、気にするなよ、次があるよ、なんて言うけど、本当はそんなこと思ってない。世界で一番暦のことが好きなヤツは、すぐそばにいるんだから。
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『精一杯の笑顔』

あの日船の上で見た視線によく似ていて、でも全然違うってすぐにわかった。ぼんやりした「いいな」じゃなくて、もっとまっすぐな「すき」。  わからないはずない、俺が暦を見る視線と同じだったから。  叶わないって知ってた、だから平気なんだ。でももう少しだけ待って。ちゃんといつもみたいに笑うから。