140SS

『唇をなぞる指先』

完全に無意識だった。口元を拭った指が触れた唇は、幼い妹じゃなく年上の相棒のそれで。  悪い、声を掛けて離そうとした指を離せなかったのは、強く手首を掴まれたから。拭って汚れた指先はそのまま赤い口の中に飲み込まれて――  じゅっ、吸われた音に指を引き抜いた俺の顔は、どんな色をしてただろう。
ロリポップ・ハニー

マシュマロ・ホイップ・アイス・シュガー

レ×ラ♀ ボードを持たずにショッピングモールにお出掛けした日の話。
SS

人間×吸血鬼

「暦、おなかすいた」  高く抜ける秋空の下の屋上、菓子パンみっつと一リットル紙パックの牛乳と俺の弁当の卵焼きを胃に収めた相棒が言うそれは、もちろん空腹のことではなくて。俺はため息をつくふりをしながら学ランの袖をまくる。  これで何度目になるだろう、この綺麗な顔した吸血種に血を与えてやるのは。
140SS

『とっくに知ってるよ』

出逢った頃から好きだった。宅飲みで潰れた親友が口走る。言った当人は夢の中。  多分言う気はなくて、墓まで持ってくつもりだったんだろう。俺と同じで。  ずっと前から知ってた。伝える気なんてなかった。相棒の距離がいいって思ってたのに。  色付いた白い肌に喉が鳴る。聞いたらもう、欲が出て仕方ない。
140SS

『もしかして、妬いてる?』

いくら仲良いっつったって、普通友達同士でおかしいだろ。お前が誰とどこで何してようが、俺は何も言えない。  そりゃちょっとはつまんねえけど、それは俺が勝手にそう思うだけでお前が行動変える事じゃねえし。  なのになんでそんな嬉しそうなんだよ。俺がかっこ悪いだけなのに。勘違いしそうになるだろ。