SS 稽古終わり・劇場前で【ひだまりのぼくら】 「んじゃ、お疲れさまっす!!」 稽古後、いつもは何もなくても残って質問なりなんなりしていく志太が、今日はそれほど遅くなく稽古場をあとにしようとしていて、僕は珍しさに声を掛けていた。言ってから、まぁ家族の関係だろうな、と思った僕の予想は、明るい声に裏切られる。 「今日はちょっとダチと約束あるんで!」 別にいつも努力しているのは知ってるし、一日や二日遊びに行くのを咎めるつもりもない。それにしても、それなりにハードな稽... 2023.07.10 SSA3
SS エチュード練習、少女漫画より【ひだまりのぼくら】 ずっと、一番近くで見てきた。俺以上の理解者はいないと思ってた。今でも思ってる。たった数か月近くで過ごしただけの馬の骨に搔っ攫われるなんて冗談だろ? なぁ、お願いだ。俺を、 『俺を選んでくれよ……』 表情は思い切り切なく、縋るように。喉から絞り出したみたいな必死な細い声、目の前の人間がいなければ死んでしまうというくらい。自分の足元に落としていた視線を上げてその人を見つめる。ああ、そこにいるのは焦がれてやまない―― ... 2023.07.10 SSA3
SS 買い出し帰り・後部座席で【ひだまりのぼくら】 車の揺れに身を任せながら、窓の外を流れていく景色を眺める。青い空は高くて、すっかりオレたちの季節だ。外から入ってくる空気は生温い。オレが開けた窓は運転席から閉められて、エアコンが動き始める音がする。まぁ、インチキエリートじゃ仕方ないか。 ポケットに入れていたスマホが震える。見れば一成からのメッセージで、これからインステライブをやるという知らせだった。インステの方は数が多くて通知を切ってることを知ってるからか、時々わ... 2023.07.10 SSA3