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『あと5秒』

目の前にはUniqueな寝顔。一度家に帰ってからお邪魔した彼の部屋、俺が来るまでの短い間に、彼は夢の世界へ旅立ってしまっていた。  呼んでおいて俺を置いていくんだから、少し仕返ししてもいいと思う。例えばあと30秒で起きなければキスしちゃうとか。  30、29、28、5、4、3、2、いち、
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『はじめてだったのに』

『初恋は叶わない』。つけっぱなしにしてたテレビから聞こえてきたそんな言葉を、俺はくだらない迷信だと思った。  だけど、隣の恋人は納得したみたいに頷いている。それがすっごく面白くない。  だってそれってつまり、彼の初恋は俺じゃないってことだ。  俺の初恋は叶ってるのに。俺は正真正銘、この恋が、
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『うつくしい古傷』

肩甲骨は翼の痕、とは何の言葉だっただろう。大切な人の背中を見て、あまりの愛しさに天使を思ったに違いない。その気持ちが少しわかる。  いまだ薄く残る背中のそれは、痛々しいけどきっと彼の誇りだから。存在そのものが愛おしい彼の大事な一部だから。  だから俺は祈りを込めて、その傷痕にキスをする。
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『自分だけ知ってればいい』_L

学校での暦は目立つ。誰でも顔か名前とスケボーバカな問題児だって知ってる。話すと明るい優しいヤツって事も。でも、新作パートを見るきらきらの目とか、工具を扱う真剣な表情とか、滑ってる時の楽しいでいっぱいの笑顔とか。スケートに夢中なかっこいい暦を知ってるのは俺だけでいい。俺だけがいい。
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『先着順』

偶然会ったお母さんと双子たちに誘われて家にお邪魔する。部屋へ駆け出す二人はお兄ちゃんに甘えたいらしい。 二人の後を追ったリビングに、妹を両手に抱いた親友の姿。 正直双子たちが羨ましい。でも腕は二本しかないし、大人げない。 気付いた彼が俺を見る。呼ばれるだけで嬉しいなんて重症だと思った。
Becaue I love you

Because I love you(+) -pure-

――月が、輝いている。  窓から顔を出して位置を確認しながらハンドルを回す。縁石にぶつかる感触に動きを止め、ギアをパーキングに入れてサイドブレーキをかける。キーを回してエンジンを切ったところで、俺はハンドルに突っ伏した。
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添い寝

いつもみたいに一緒に滑りに行く前に、ボードのメンテをしてくれるって、暦が言ったから。俺が向かったのは、いつもの海の見える公園でも、通学路の待ち合わせ場所でもなく、赤い花が咲く暦の家だった。  暦に似た色の前でボードを止めて、着いたとメッセージを送る。いつもはすぐに返事が返ってくるのに、画面にはなんの変化もない。  そっと、敷地の中を伺う。建物の前まで入ってみる。開け放たれた部屋を覗く。 「暦ー?」  返事はない。ぱた...