SS ∞ 眠くなると評判の生物教師がの話し声が聞こえ始める。言われる通りのページ、ではなく、教科書の真ん中あたりを開く。一番バランスがいいからだ。 教科書を立てて、外側を資料集で覆う。教科書は厚くて倒れにくいけど小さすぎて、資料集は髪が薄くて倒れやすいけれど大きい。重ねて机に立てれば、一番後ろの席では教壇から見えないそこそこ良いバリケードになる。 さて、どうしようか。昨夜あいつが送ってきた動画をもう一回見ておこうか。それと... 2021.04.14 SSSK∞
SS 次の瞬間、世界は歓声に包まれた。 月明りが落ちる窓辺で耳を澄ませる。微かに届く排気音。だんだん大きくなるそれに小さく笑って、窓に作ったアールを滑り出す。宙を舞いながらデッキを回して、警戒な音を立ててアスファルトに降り立つ。それとほぼ同時に聞こえたバイクの止まる音に振り返る。 「暦!」 応えを声に出す代わりに拳を突き出す。俺たちの手が無限をかたどって、微笑みあう。この形にもずいぶん慣れた。 「ほら、早く」 「おう」 投げられたヘルメットを被って後ろに飛... 2021.04.10 SSSK∞