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彰冬習作
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※成人済、こはね視点、彰人不在、杏こは杏
※彰冬と言い張る
***
もう夜も更けた時間、杏ちゃんに呼ばれたお店で私が見たのは、楽しそうに向かいを見つめる杏ちゃんと、ふわふわと東雲くんの話をする青柳くんの姿だった。
先月のイベントで知り合った人たちに誘われた打ち上げ。次のイベントの準備もある時期だったけど、RADerやクラシックも好きだという彼らの希望があったから、杏ちゃんと青柳くんの二人だけで参加して、その日の準備は私と東雲くんで進めることになった。
杏ちゃんから連絡をもらったのは夜の九時過ぎ。その打ち上げがいったんお開きになって、二人だけで別のお店に入ったから、作業が落ち着いてたら会いたい、というお誘いで、もちろん快諾した。東雲くんは車で遠出をしてたから、私は先に二人と合流することにした、んだけど。
「杏ちゃん……もしかして、青柳くん、結構酔ってる?」
みんなでよく来るお店の個室、杏ちゃんの隣に座りながら尋ねる。杏ちゃんの向かいに座る青柳くんは、いつも飲むときより赤い顔をしていて、どこかふわふわした雰囲気だ。そう、東雲くんと二人でいるときみたいな。
私の注文のためにだろう、杏ちゃんは店員さんを呼ぶボタンを押しながら答えてくれる。
「冬弥のお父さんに会ったことある人だったみたいでさ。すごい楽しそうに話聞いてるうちに結構飲んでたみたい。目上の人と一緒だったのもあってあんまり顔には出てなかったけど、ちょっと危ないかなー?って思って、二次会は辞退してきたんだ」
慣れたとこで気が抜けたのかな、ここ来てからふにゃってなっちゃった。杏ちゃんの話に頷きつつ、来てくれた店員さんにお湯割りをお願いする。それから、ななめ前の青柳くんを見つめる。私に気付いた彼は、きれいなアイスグレーに私を映して笑った。
「……小豆沢。小豆沢も聞いてくれ、彰人がかっこいいんだ」
「……え?」
普段より上機嫌な声が語るのは、彼の相棒の話だった。イベントで隣に立ったときの姿や歌声、練習しているときの熱心な様子。淀みなく、絶えることなく紡がれる事柄のほとんどは、私たちも高校生のころからよく知っている東雲くんの美点たち。
「さっきからずーっとこう」
ずーっと彰人がかっこいいって話してて、しかも全部違う話なの。杏ちゃんがテーブルの上に置いたスマホに触れながら言う。その表情は落ち着いていて、冷やかすとか呆れたとか、そんな感情は見えない。でも確かに、青柳くんはお酒に強い方だから、私もここまで酔ったのを見たのは初めてだけど。結構予想通り、かも。
私はグラスを傾けながら頷く。
「ふふ、わかるよ。東雲くん、かっこいいよね」
「そうか、わかってくれるか小豆沢」
「ええ~こはね私はぁ~?」
今度は杏ちゃんが私の話をしはじめた。ちょっと恥ずかしくて、でも嬉しい。杏ちゃんはいつも私のことを褒めてくれるけど、いつもよりもっと饒舌な気がする。やっぱり杏ちゃんも酔ってるみたい。
「こはねぇ~……」
「ありがとう、杏ちゃん。私もかっこよくて可愛い杏ちゃんのこと、大好きだよ」
「こはねぇ~~!!」
抱きついてくる杏ちゃんを受け止める。杏ちゃんは私を抱き寄せる腕を強めながら、青柳くんを指さした。
「どーだ冬弥、こはねはかっこいいし、それにこーんなに可愛いんだから! 彰人じゃこうはいかないでしょ!」
「杏ちゃん……」
頬ずりしてくる杏ちゃんの背中をゆるくさする。青柳くんは突然の勝利宣言に一瞬呆けた顔をしたけれど、その表情はすぐにやわらかくくずれた。
「……そうかもしれない。彰人も二人を含む身内の前では素直だけれど、それでも格好をつけたがるところがあるから」
だけど。
「俺にだけ見せてくれる彰人は、とても可愛らしくて、愛おしいと、そう思う」
そんな彰人が好きだ。
――まるで、花が咲いたような、お砂糖を煮詰めたみたいな。今日見た中でも、とびきりの甘い表情で、青柳くんが笑うから。
お裾分けをもらったみたいで、私も幸せな気持ちになってしまって。
「――うん」
一生大事にしよう。何百回目の決意をして、まどろみ始めた杏ちゃんを抱きしめた。
***
「ねーこはね、この前冬弥がめちゃくちゃ惚気てたときあったでしょ」
「あ、杏ちゃんと青柳くんが先にいつものお店にいたときのこと?」
「そうそう。あのとき冬弥の惚気録音してたんだけどさ。あとで彰人に聞かせたら面白い反応見られるかなって思って」
「それで杏ちゃん途中でスマホいじってたんだね」
「うん。で、録音聞いて彰人のやつ何て言ったと思う?」
「……そういう言い方するってことは、杏ちゃんの言う面白い反応、とかじゃなかったんだよね……『知ってる』とか?」
「『ほとんど毎日聞いてる』」
「……え」
「そのときの彰人の顔がさ、仕方ねーな、みたいに見せて、大事ですー好きですーってのをぜんっぜん隠そうともしてなくてさ」
「うん」
「何も言えないじゃん、そんなの」
「うん。……ねぇ、杏ちゃん」
「んー?」
「私も大好きだよ」
2125文字,
2025.05.23 10:00
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※成人済、こはね視点、彰人不在、杏こは杏
※彰冬と言い張る
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もう夜も更けた時間、杏ちゃんに呼ばれたお店で私が見たのは、楽しそうに向かいを見つめる杏ちゃんと、ふわふわと東雲くんの話をする青柳くんの姿だった。
先月のイベントで知り合った人たちに誘われた打ち上げ。次のイベントの準備もある時期だったけど、RADerやクラシックも好きだという彼らの希望があったから、杏ちゃんと青柳くんの二人だけで参加して、その日の準備は私と東雲くんで進めることになった。
杏ちゃんから連絡をもらったのは夜の九時過ぎ。その打ち上げがいったんお開きになって、二人だけで別のお店に入ったから、作業が落ち着いてたら会いたい、というお誘いで、もちろん快諾した。東雲くんは車で遠出をしてたから、私は先に二人と合流することにした、んだけど。
「杏ちゃん……もしかして、青柳くん、結構酔ってる?」
みんなでよく来るお店の個室、杏ちゃんの隣に座りながら尋ねる。杏ちゃんの向かいに座る青柳くんは、いつも飲むときより赤い顔をしていて、どこかふわふわした雰囲気だ。そう、東雲くんと二人でいるときみたいな。
私の注文のためにだろう、杏ちゃんは店員さんを呼ぶボタンを押しながら答えてくれる。
「冬弥のお父さんに会ったことある人だったみたいでさ。すごい楽しそうに話聞いてるうちに結構飲んでたみたい。目上の人と一緒だったのもあってあんまり顔には出てなかったけど、ちょっと危ないかなー?って思って、二次会は辞退してきたんだ」
慣れたとこで気が抜けたのかな、ここ来てからふにゃってなっちゃった。杏ちゃんの話に頷きつつ、来てくれた店員さんにお湯割りをお願いする。それから、ななめ前の青柳くんを見つめる。私に気付いた彼は、きれいなアイスグレーに私を映して笑った。
「……小豆沢。小豆沢も聞いてくれ、彰人がかっこいいんだ」
「……え?」
普段より上機嫌な声が語るのは、彼の相棒の話だった。イベントで隣に立ったときの姿や歌声、練習しているときの熱心な様子。淀みなく、絶えることなく紡がれる事柄のほとんどは、私たちも高校生のころからよく知っている東雲くんの美点たち。
「さっきからずーっとこう」
ずーっと彰人がかっこいいって話してて、しかも全部違う話なの。杏ちゃんがテーブルの上に置いたスマホに触れながら言う。その表情は落ち着いていて、冷やかすとか呆れたとか、そんな感情は見えない。でも確かに、青柳くんはお酒に強い方だから、私もここまで酔ったのを見たのは初めてだけど。結構予想通り、かも。
私はグラスを傾けながら頷く。
「ふふ、わかるよ。東雲くん、かっこいいよね」
「そうか、わかってくれるか小豆沢」
「ええ~こはね私はぁ~?」
今度は杏ちゃんが私の話をしはじめた。ちょっと恥ずかしくて、でも嬉しい。杏ちゃんはいつも私のことを褒めてくれるけど、いつもよりもっと饒舌な気がする。やっぱり杏ちゃんも酔ってるみたい。
「こはねぇ~……」
「ありがとう、杏ちゃん。私もかっこよくて可愛い杏ちゃんのこと、大好きだよ」
「こはねぇ~~!!」
抱きついてくる杏ちゃんを受け止める。杏ちゃんは私を抱き寄せる腕を強めながら、青柳くんを指さした。
「どーだ冬弥、こはねはかっこいいし、それにこーんなに可愛いんだから! 彰人じゃこうはいかないでしょ!」
「杏ちゃん……」
頬ずりしてくる杏ちゃんの背中をゆるくさする。青柳くんは突然の勝利宣言に一瞬呆けた顔をしたけれど、その表情はすぐにやわらかくくずれた。
「……そうかもしれない。彰人も二人を含む身内の前では素直だけれど、それでも格好をつけたがるところがあるから」
だけど。
「俺にだけ見せてくれる彰人は、とても可愛らしくて、愛おしいと、そう思う」
そんな彰人が好きだ。
――まるで、花が咲いたような、お砂糖を煮詰めたみたいな。今日見た中でも、とびきりの甘い表情で、青柳くんが笑うから。
お裾分けをもらったみたいで、私も幸せな気持ちになってしまって。
「――うん」
一生大事にしよう。何百回目の決意をして、まどろみ始めた杏ちゃんを抱きしめた。
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「ねーこはね、この前冬弥がめちゃくちゃ惚気てたときあったでしょ」
「あ、杏ちゃんと青柳くんが先にいつものお店にいたときのこと?」
「そうそう。あのとき冬弥の惚気録音してたんだけどさ。あとで彰人に聞かせたら面白い反応見られるかなって思って」
「それで杏ちゃん途中でスマホいじってたんだね」
「うん。で、録音聞いて彰人のやつ何て言ったと思う?」
「……そういう言い方するってことは、杏ちゃんの言う面白い反応、とかじゃなかったんだよね……『知ってる』とか?」
「『ほとんど毎日聞いてる』」
「……え」
「そのときの彰人の顔がさ、仕方ねーな、みたいに見せて、大事ですー好きですーってのをぜんっぜん隠そうともしてなくてさ」
「うん」
「何も言えないじゃん、そんなの」
「うん。……ねぇ、杏ちゃん」
「んー?」
「私も大好きだよ」