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Cocktail
#akty
2025.11.24-26webオンリー初出 Klavierの続き
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「せっかくピアノセッテッィングしたんだし、そのジャズバーの練習がてら歌っていきなよ!」
そう言ったのは、どちらのお調子者だったか。
ともかく、件のバーで歌う曲に似たバーチャルシンガー楽曲を奏でられ、あまつさえ挑発するような弾き方さえされたら、歌わないという選択肢なんかなくて。
鍵盤の音色に求められるままに相棒と声を重ねる。目を合わせて頷きあい、乗ってこいと煽る演奏に応える。
転調や曲の移り変わりに歌で返して数曲、不意に音を止めたピアノの奏者の方を見れば、そっと手首を指さしている。壁掛け時計を見ると、長針は思ったより回った場所にあった。
「一旦休憩するか……」
「そうだな……」
軽く腕を回しながらカウンターに戻る。高い椅子に腰を落ち着けると、彰人の目の前にグラスが置かれた。
「おつかれさま! はい、冬弥くん色のカクテル~」
彰人くんも飲めるやつだよ、とルカが差し出してきたのは青から水色、白へのグラデーションが美しいカクテルだった。歌っている間にメイコが用意してくれていたのだろう。冬弥色ってどういうことだと思わなくもなかったが、ありがたくグラスに口を付ける。歌い終わりの身体は一気にグラスの半分ほどを飲み干していた。
「……ん?」
ふと、喉に違和感を覚える。じわじわと熱くなる感じ。これは、まさか。
「あー! ルカ、彰人くんのそれボクのお酒!」
思い切りむせた。つまりこれはアルコールということで。
「……何飲ますんすか!」
「ごめーん気付かなかった~!」
「ボクのお酒~!」
じゃあ青と白はカイトの色だったのか。その事実になんとなく安堵しつつ、わちゃつきだした二人に背を向けた。カウンターについた肘にもたれかかる。
「ったく……」
「お酒を飲んだのか?」
びくり、顔を上げる。冬弥の顔は思ったより近い距離で、じっとりと彰人を見つめていた。
「いや違う、これは事故で。ルカさんに出されたのがカイトさんのカクテルだっただけで」
背後の二人を示しながら弁解する。彰人とその後ろを交互に見た冬弥は、しばらくして再度彰人を見つめてくる。
「……では彰人の意思で飲んだわけではないのだな」
「そう言ってんだろ……そもそも、飲める歳でも進んで飲もうとはしねえと思うぞ」
安堵したまま言いつのれば、相棒はきょと、と首を傾げる。
「……そうなのか?」
「ん? ああ、普段からクラブでも歌わせてもらってるし、バーで歌うのもこれっきりでもねえだろうし、成人したら付き合いでくらい飲むだろうけどよ。わざわざ喉痛めるようなもん自分からは飲まねえだろうなって」
冬弥はどこか少しむっとしている。やはり飲んだことを気にしているのだろうか。
「んだよ……間違えちまったのは仕方ねえだろ」
「いや、事故なのはわかった。それはいいんだ。ただ、少し残念に感じてしまって」
「は?」
「WEEKEND GARAGEで楽しそうにお酒を飲んでいる人たちを見ていたからな。俺も成人したら彰人と一緒に飲むのだと、楽しみにしていたんだが」
彰人は成人後の飲酒に積極的ではないようだし、初めてのお酒も取られてしまったな。
そう言って、少し寂しそうに眉を下げるから。
……ああもうこいつは。
「………………お前と飲みたくないなんて言ってねえだろ……」
好んで日常的に飲むことはしないにしろ、彰人だって気心しれた仲との飲みには興味があるし、酔ってとろけた冬弥を見てみたいという欲もある。
彰人はひとつ息を吐き出すと、グラスに残っていたカクテルを一気に煽った。
「彰人!?」
今のやりとりのあとで明らかに自らアルコールを口にしたことにだろう、冬弥の戸惑いの声が聞こえる。表情には法律違反を咎めようとする色が見える。
その冬弥の顎を掴んで、唇を重ねた。
「んっ……!」
唇を押し開き、煽ったものを流し込む。冬弥の喉が動くのを見てから、今度は薄い舌を引き込んで己の口の中で絡め取る。
「ふ……んむ……」
「……は、」
たっぷり口内を味わって、彰人の腕を叩いていた冬弥の手の力が抜けたころ、唇を離した。俯いて肩を上下させる冬弥を見て、ふっと笑みが零れる。
「……これで共犯。で、オレの初めての酒はお前と一緒だったってわけだ」
だから、これでいいだろ。そう言い落としてずらした視線の先で、店の入り口からこはねと杏、ミクが彰人たちを見ていた。杏とミクはリンとレンの目を塞いでいる。
時間が、止まったみたいだった。
「……おまえら、いつから」
思わず声が零れるが、幼い二人が目を塞がれている事実が見られていたことを物語っている。最中に冬弥が腕を叩いてきていたのも、彰人が夢中で聞こえなかったドアベルの音を優れた彼の耳は捉えていたからだったのかもしれない。
そもそもメイコさんたちがいることはわかっていたはずなのに、何してたんだ、オレ。冷静になってきて頭を抱えた彰人に、杏の声が降ってくる。
「大人三人でバー状態でカフェ独占してるからつまんないーってリンちゃんたちが来たからこはねも誘って一緒に来てみたんだけど」
そこまで言って、ミクに目配せする。何ー?とか離せよー!という黄色い声だけが聞こえる。
「お酒とは別の意味で二人には早かったかなー」
「……ええと、ごゆっくり?」
からんからん、ぱたん。こはねの言葉を最後に、五人は店から姿を消した。彰人の隣で俯いていた冬弥が立ち上がる。
「冬弥?」
「……白石たちに説明してくる」
冬弥は顔を隠したまま、足早に店を出てしまう。からんからん、再度ドアベルが店に鳴り響いた。
「……」
そっと背後を伺うと、青色と桃色はカクテルを混ぜるのに夢中になっている。何も知らないと、そう接してくれるつもりなのだろう。無言の気遣いにどうしようもなくいたたまれなくなる。
ふと、カウンターの向こうに動く影があり、そちらを見る。メイコが透明な液体が入ったグラスを差し出してくる。
「……さっきのカイトのカクテル、ちょっと強いお酒を使ってたみたいだから」
言い訳と共に与えられたグラスを手に取って、匂いを嗅いでみる。確かに水だと確認したそのグラスを、彰人は一息で空にした。
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2025.11.18 22:35
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「せっかくピアノセッテッィングしたんだし、そのジャズバーの練習がてら歌っていきなよ!」
そう言ったのは、どちらのお調子者だったか。
ともかく、件のバーで歌う曲に似たバーチャルシンガー楽曲を奏でられ、あまつさえ挑発するような弾き方さえされたら、歌わないという選択肢なんかなくて。
鍵盤の音色に求められるままに相棒と声を重ねる。目を合わせて頷きあい、乗ってこいと煽る演奏に応える。
転調や曲の移り変わりに歌で返して数曲、不意に音を止めたピアノの奏者の方を見れば、そっと手首を指さしている。壁掛け時計を見ると、長針は思ったより回った場所にあった。
「一旦休憩するか……」
「そうだな……」
軽く腕を回しながらカウンターに戻る。高い椅子に腰を落ち着けると、彰人の目の前にグラスが置かれた。
「おつかれさま! はい、冬弥くん色のカクテル~」
彰人くんも飲めるやつだよ、とルカが差し出してきたのは青から水色、白へのグラデーションが美しいカクテルだった。歌っている間にメイコが用意してくれていたのだろう。冬弥色ってどういうことだと思わなくもなかったが、ありがたくグラスに口を付ける。歌い終わりの身体は一気にグラスの半分ほどを飲み干していた。
「……ん?」
ふと、喉に違和感を覚える。じわじわと熱くなる感じ。これは、まさか。
「あー! ルカ、彰人くんのそれボクのお酒!」
思い切りむせた。つまりこれはアルコールということで。
「……何飲ますんすか!」
「ごめーん気付かなかった~!」
「ボクのお酒~!」
じゃあ青と白はカイトの色だったのか。その事実になんとなく安堵しつつ、わちゃつきだした二人に背を向けた。カウンターについた肘にもたれかかる。
「ったく……」
「お酒を飲んだのか?」
びくり、顔を上げる。冬弥の顔は思ったより近い距離で、じっとりと彰人を見つめていた。
「いや違う、これは事故で。ルカさんに出されたのがカイトさんのカクテルだっただけで」
背後の二人を示しながら弁解する。彰人とその後ろを交互に見た冬弥は、しばらくして再度彰人を見つめてくる。
「……では彰人の意思で飲んだわけではないのだな」
「そう言ってんだろ……そもそも、飲める歳でも進んで飲もうとはしねえと思うぞ」
安堵したまま言いつのれば、相棒はきょと、と首を傾げる。
「……そうなのか?」
「ん? ああ、普段からクラブでも歌わせてもらってるし、バーで歌うのもこれっきりでもねえだろうし、成人したら付き合いでくらい飲むだろうけどよ。わざわざ喉痛めるようなもん自分からは飲まねえだろうなって」
冬弥はどこか少しむっとしている。やはり飲んだことを気にしているのだろうか。
「んだよ……間違えちまったのは仕方ねえだろ」
「いや、事故なのはわかった。それはいいんだ。ただ、少し残念に感じてしまって」
「は?」
「WEEKEND GARAGEで楽しそうにお酒を飲んでいる人たちを見ていたからな。俺も成人したら彰人と一緒に飲むのだと、楽しみにしていたんだが」
彰人は成人後の飲酒に積極的ではないようだし、初めてのお酒も取られてしまったな。
そう言って、少し寂しそうに眉を下げるから。
……ああもうこいつは。
「………………お前と飲みたくないなんて言ってねえだろ……」
好んで日常的に飲むことはしないにしろ、彰人だって気心しれた仲との飲みには興味があるし、酔ってとろけた冬弥を見てみたいという欲もある。
彰人はひとつ息を吐き出すと、グラスに残っていたカクテルを一気に煽った。
「彰人!?」
今のやりとりのあとで明らかに自らアルコールを口にしたことにだろう、冬弥の戸惑いの声が聞こえる。表情には法律違反を咎めようとする色が見える。
その冬弥の顎を掴んで、唇を重ねた。
「んっ……!」
唇を押し開き、煽ったものを流し込む。冬弥の喉が動くのを見てから、今度は薄い舌を引き込んで己の口の中で絡め取る。
「ふ……んむ……」
「……は、」
たっぷり口内を味わって、彰人の腕を叩いていた冬弥の手の力が抜けたころ、唇を離した。俯いて肩を上下させる冬弥を見て、ふっと笑みが零れる。
「……これで共犯。で、オレの初めての酒はお前と一緒だったってわけだ」
だから、これでいいだろ。そう言い落としてずらした視線の先で、店の入り口からこはねと杏、ミクが彰人たちを見ていた。杏とミクはリンとレンの目を塞いでいる。
時間が、止まったみたいだった。
「……おまえら、いつから」
思わず声が零れるが、幼い二人が目を塞がれている事実が見られていたことを物語っている。最中に冬弥が腕を叩いてきていたのも、彰人が夢中で聞こえなかったドアベルの音を優れた彼の耳は捉えていたからだったのかもしれない。
そもそもメイコさんたちがいることはわかっていたはずなのに、何してたんだ、オレ。冷静になってきて頭を抱えた彰人に、杏の声が降ってくる。
「大人三人でバー状態でカフェ独占してるからつまんないーってリンちゃんたちが来たからこはねも誘って一緒に来てみたんだけど」
そこまで言って、ミクに目配せする。何ー?とか離せよー!という黄色い声だけが聞こえる。
「お酒とは別の意味で二人には早かったかなー」
「……ええと、ごゆっくり?」
からんからん、ぱたん。こはねの言葉を最後に、五人は店から姿を消した。彰人の隣で俯いていた冬弥が立ち上がる。
「冬弥?」
「……白石たちに説明してくる」
冬弥は顔を隠したまま、足早に店を出てしまう。からんからん、再度ドアベルが店に鳴り響いた。
「……」
そっと背後を伺うと、青色と桃色はカクテルを混ぜるのに夢中になっている。何も知らないと、そう接してくれるつもりなのだろう。無言の気遣いにどうしようもなくいたたまれなくなる。
ふと、カウンターの向こうに動く影があり、そちらを見る。メイコが透明な液体が入ったグラスを差し出してくる。
「……さっきのカイトのカクテル、ちょっと強いお酒を使ってたみたいだから」
言い訳と共に与えられたグラスを手に取って、匂いを嗅いでみる。確かに水だと確認したそのグラスを、彰人は一息で空にした。